圧倒的に両想い?


最近中山奈緒子の様子がどこかおかしい。
仕事中でもときどきため息をついては、なにか物思いにふけっているようなことがよくある。
そのことを仕事の合間に谷村明美に話したら、彼女も同じように感じていたようだった。

「ひょっとしてどこか体の調子でも悪いんじゃないでしょうか? 私、彼女に聞いてみます」
そう言った明美の表情からは、いつもの笑顔が消えていた。

「奈緒子さん、ちょっと話したいことがあるんだけど、いいかな?」
明美は仕事を終えて帰ろうとする奈緒子を呼び止めた。
奈緒子は、いいですよ、と言って少し微笑みながら頷いた。
「それじゃあ、いつものカフェで話ししようか」
明美はそう言って、奈緒子と一緒に歩き出した。

カフェに着いてオーダーを済ませると、明美は奈緒子に言った。
「最近どうしたの? なんか仕事中でもよくぼーっとして、いつもの元気がないわよ。どこか体の調子でも悪いの?」
奈緒子は明美のその問いに、最初は少し話しづらそうにしていたが、やがてゆっくりと少しずつ話し始めた……。

翌日の昼休み、僕が会社近くのハンバーガーショップで昼食をとっていると、明美がやって来た。そして隣に座って、同じようにハンバーガーを食べながら話しかけてきた。
「奈緒子さんの元気がない原因がわかったんです。やっぱり彼女、病気でした。あっ、でも心配しないでくださいね、病気は病気でも恋の病だったんです」
明美によると、奈緒子が好きなのは取引先のT社の人間で、最近うちの会社に出入りするようになった村川陽一という男だった。

「ふーん、そうだったの。でもそれならなんとか彼女の恋が叶うようにしてやりたいが、こればかりはなかなか難しいよな」
僕のその言葉に対して、明美はコーヒーを飲みながら、
「大丈夫ですよ。彼女、いつかちゃんと彼に自分の気持ちを伝えるって言ってましたから。それに、これは私の勘なんですけど、うちの会社での彼の様子を見てると、彼も奈緒子さんに好意を持っているみたいですよ。だからきっとうまくいきますよ!」
と言って、微笑んでいた。

そして明美は続けて、
「もしかしたら先輩も誰か素敵な女性に想われてるかもしれませんよ」
といたずらっぽく言ったが、僕はそれに対して微笑みを返し、逆に明美に言った。
「そういう君はどうなの? 君にだって好きな人はいるんだろう?」

明美はしばらく黙っていたが、やがていつもの笑顔で言った。
「私にも奈緒子さんみたいに憧れている人がいますよ。でも、その人はまだ今の私の手には届かない人なんです。もっと自分自身が成長して、その人にふさわしいと思えるようになったら、その時は気持ちを伝えようと思ってるんです」

数日後、職場に以前の元気な奈緒子の姿が戻ってきた。
どうやら明美の勘は当たったようだった。

 

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