東京タワー


2003年秋、僕は東京タワーの見えるマンションに引っ越した。
それは、特に僕が東京タワーに特別な思い入れがあったわけではなかった。
引っ越しを考えていた時に、偶然そのマンションに巡り合っただけだった。
しかしそれ以来、僕はマンションのバルコニーから見える東京タワーが好きになった。

東京タワー……それは、1958年12月23日に電波塔として設立された。
地上333メートルの高さを誇り、自立鉄塔としては世界最高だった。
冬はオレンジ色、夏は昼光色に光り、タワー内には展望台、蝋人形館、トリックアートギャラリーなどのアミューズメントスポットなどがある。

万華鏡のように煌めくビルや道路の光など、無数に輝く光が夜空一面を覆い尽くす東京都心の夜の光景にあって、なかでもひと際目を引くのが、ライトアップされた東京タワーだった。

僕は毎日バルコニーに立って、東京タワーを眺めている。
朝、昼、晩、そして季節の移り変わりとともに、僕の目に映る東京タワーはその表情を変えていく。
そう、ひとつとして同じ東京タワーは存在しない、見るたびに微妙な変化がある。僕の心にはそんなふうに思えた。

引っ越してきて間もない頃、僕はそんな東京タワーをときどき写真に撮っていた。
しかしそのうちに、僕は自分で描いてみたいと思うようになった。
スケッチブックに鉛筆で下書きをして、その上から水性のマーカーで色をつけていく。
僕が初めて東京タワーを描いたのは、クリスマスシーズンにライトアップされた時だった。

僕の彼女は東京タワーには特別な思い出があるようで、僕が引っ越すことを告げた時、その思い出について楽しそうに話してくれた。
「私ね、5歳ぐらいの時に両親に初めて東京タワーに連れていってもらったの。すごく楽しかったわ。でもね、蝋人形館に入った時、そこにあった人形がとても怖くて、大声を上げて泣いてしまって、両親を困らせてしまったのよ」

引っ越してから迎えた初めての僕の誕生日、彼女がバースデーケーキを作ってお祝いしてくれた。
ケーキには蝋燭が立てられていたが、よく数えてみると何度数えても蝋燭は一本足りなかった。
そのことを尋ねると彼女は、少しいたずらっぽく微笑んで、そして窓の外を指さして言った。
「最後の一本はあれよ」
彼女の指さす方向には、夜の街であたたかな光を放っているような東京タワーがあった。それを見た僕は思わず微笑んで、それから彼女の方を見て声を上げて笑っていた。

人々はいつの時代も、それぞれの想いを込めて、高くそびえ立ち、温かく光り輝く東京タワーを見つめている。

 

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