| パーキングはバラ色に
朝、小島美紀はいつものように駐車場に車を止めた。
美紀はこの駐車場がとても気に入っていた。会社にも近いし、何よりも月極めの料金が周りの駐車場に比べると安かったのだ。
美紀が車から降りて歩きながら、何気なく駐車場を見渡したとき、一台の車が目に留まった。
なぜならその車は美紀の車と同じ車種で、しかも色まで同じ赤だったからだ。
違うところといえば、ナンバープレートはもちろんだが、輝き方が違っていた。その車はピカピカの新車だったのだ。
(あの車だれが乗ってるのかしら。でも新車か……いいなー、私も新しい車が欲しくなりそう)
美紀はそんなことを思いながら、駐車場を出て会社へと向かった。
それから美紀はその車のことが気になった。翌日からその車の持ち主が誰なのか、なぜかとても知りたいと思うようになった。
朝、駐車場に着くと、美紀はあの車を探し、もし止まっていなければしばらく車の中であの車がやって来るのを待っていた。しかしそうタイミングよく現れてはくれなかった。
だがある時、美紀は思いがけずその車の持ち主を知ることができた。
「小島先輩、一緒に帰りましょう」
仕事が終わって会社を出た美紀が駐車場に向かって歩いていると、同じ総務課の後輩、神崎真弓に声をかけられた。
真弓は美紀より三歳年下で、この春に入社してきた新入社員だった。
美紀は真弓が入社してきたときに、彼女に自分と同じ駐車場を紹介してやっていた。だから真弓はいつも美紀と同じ駐車場に車を止めて通勤している。
駐車場に着いた美紀が何気なく真弓に車のことを尋ねると、真弓は美紀を自分の車のところへ誘導したが、なんとそれは、例のあの赤い車だった。
「へぇー、私の車が先輩の車と同じだったなんて、なんか偶然ですね」
真弓はそう言いながら、楽しそうに笑っていた。
それから数日後、美紀がいつものように駐車場に車を止めると、ちょうど真弓の車も入ってきた。
しかしよく見ると、その車を運転しているのは真弓ではなかった。真弓は助手席に乗っていて、運転しているのは男性だった。
真弓とその男性は車から降りると、とても親しそうに並んで歩いていった。
(あの二人、どういう関係なのかしら。ひょっとして彼女、結婚してるの?)
二人の姿を見ながら、美紀はゆっくりと会社へ向かって歩き出した。
それから美紀は、駐車場でたびたび真弓とその男性の姿を見ることになったが、その男性はとても素敵な印象で、美紀は真弓のことを少し羨ましく思っていた。
二人の関係に興味を抱いた美紀は、ある日真弓にそのことを尋ねてみたが、そのとき真弓は笑いながら、美紀に話してくれた。
「私、まだ結婚してませんよ。それにあの人は、私の彼氏でもなんでもなくて兄なんです。会社が近くなので、一緒に通勤してるんですよ」
その後、美紀の車と真弓の車が、仲良く隣同士に止められるようになったのは言うまでもない。
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