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夢来たりし街角
私は三年ぶりにこの街に帰ってきた。
三年前この街を出る時、もう二度と帰ってくることはないと思っていた。でも、私は帰ってきた。
なぜ帰ってきたのか、それは私にもわからない。だけど、もしかしたら私の心がこの街の空気に引き寄せられたのかもしれない。
懐かしい街角は三年前のあの日のままだった。
駅の改札口を出ると、南に延びている大通りがあり、三つ目の角を曲がって少し奥に入ったところにイタリア料理店があった。
私はそのお店がお気に入りだった。そして彼とよくそこで食事をした。
ふたりともお酒が苦手だったので、いつもペリエで乾杯していた。
五つ目の角の大通りに面したところには、とても素敵なカフェがあった。
そのカフェはいつも心地よい音楽が流れていて、私と彼との待ち合わせの場所だった。
しかし三年前、私はこのカフェで彼に別れを告げた。
彼はとても優しい表情で私の気持ちを受け止めてくれた。そのときのことは今でもはっきりと憶えている。
そして、いま私はそのカフェの入口の前まで来ている、彼と再会するために。
彼はいったいどんな態度で私と接してくれるだろうか……。
彼女が帰ってくる。
三年前に別れて以来、もう二度とこの街には帰ってこないと思っていた彼女が、再び僕の前に姿を現そうとしている。
そしていま僕は、彼女がやってくるのを三年前に別れを告げられたのと同じカフェで待っている。
このカフェは僕の好きな店の一つだった。
いつも心地よい音楽が流れていて、とてもくつろげる場所だった。
僕はアメリカンを飲みながら、彼女のことを思い出していた。
店には Elton Johnの 『Your Song』が流れていた。
彼女には夢があった。そして、それを彼女はいつも僕に話してくれていた。
「私ね、いつか子供たちに英語を教えてあげたいの。でもそれだけじゃないわ。子供たちに日本とは違う、外国のことを知ってもらいたいの。良いところも悪いところも……それで子供たちがなにかを感じてくれればいいと思うわ」
そういえば、彼女は旅行が好きで、よく海外旅行をしていたな……。
彼が二杯目のアメリカンを注文したとき、店内のBGMがWhitney Houstonの『 One Moment in Time』に変わった。
そして、それとほぼ同時に入口の扉が開いて、彼女が入ってきた。
二人は三年ぶりの再会をはたし、顔を見合わせて微笑みあった。
しかし、それは三年前と変わらない、いつもの光景だった。
彼女はこの街角で夢を叶えるだろう。
彼はそんな彼女のことをいつも見守っているだろう。
そして二人は……いつまでもこの街角を愛し続けることだろう。
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