|
Good Morning !
「うっそー、もうこんな時間? また会社に遅れちゃうわ」
彼女は朝起きるのが苦手だった。
一応、夜寝る前に目覚まし時計をセットして寝るのだが、目覚まし時計のベルが鳴っても起きない。さらに、ベルが鳴ると自分で止めて、すぐまた眠り込んでしまい、しかもそのことを全く憶えていない。
彼女は最近特に出勤するのが遅くなって、いつも時間ぎりぎりで、遅刻することもときどきあった。
僕は彼女と同じ職場で働いているが、以前はそんなことはなく、僕より早く出勤していたほどだった。
彼女の出勤時間が遅くなってきたのは、ちょうど一カ月ぐらい前からだった。
一度課長が彼女に、もう少し早く起きるようにしたらどうか、と注意した事があったが、そのとき彼女は、
「目覚まし時計はセットして寝るんですけど、気がついたら寝過ごしてるんです。ひょっとしたら目覚まし時計のベルが鳴ってないんじゃないですかね」
と冗談っぽく笑っていた。
「そんなことはないだろう。それは君が寝ぼけてベルを止めてるからだろう。それからまた寝てしまうからダメなんだよ。目覚ましを二、三個用意しておいたらどうだ?」
課長のその言葉に彼女は、
「はい、わかりました。頑張って早く起きれるようにします」
と言っていた。
ある日、職場の飲み会があった時、帰り道で僕と彼女が一緒になったことがあった。そのとき彼女は僕に話してくれた。
「私、一カ月前に引越したんです。だから今は通勤時間が一時間ぐらいかかるようになって……だからそのぶん早く起きなきゃいけないんですよね。でも、それがなかなかできなくて」
と言った。それを聞いた僕は、
「そうだったの。だったらそのことを課長に話したらよかったじゃないか」
と言ったが、それに対して彼女は、
「そんなの遅れた理由になりませんよ、私が悪いんだから」
と笑っていた。
それから彼女は意外なことを話してくれた。
「それに私、実は福祉関係の資格を取ろうと思って、毎晩勉強してるんです。だからつい寝るのが遅くなっちゃうんです。あっ、このことは会社のみんなには内緒にしておいてくださいね。なんか恥ずかしいですから」
彼女の話を聞き終わって、僕は彼女に提案した。
「だったら僕がモーニングコールをしてやろうか?」
「本当ですか? 助かります、よろしくお願いします」
彼女は、嬉しそうな笑顔でペコリと頭を下げた。
翌朝、彼女の枕元においてある携帯電話の着メロが鳴り響いた。
しかし、そのとき彼女はすでに目を覚ましていた。
(せっかくのモーニングコール、出れなかったら悪いなって思ってたら、目が覚めちゃった) 彼女はそう思いながら、ゆっくりとモーニングコールに応答した。
[ Previous ] .............................. [ Back ] .............................. [ Next ]
|