アジサイの花咲く頃


六月生まれの私は、アジサイの花が大好きです。
梅雨の季節はとても蒸し暑くて嫌なのですが、そんな時でもアジサイの花を見ていると心が癒されて、すごく楽しい気持ちになります。

私の住んでいる街には、『アジサイ公園』と呼ばれている公園があります。
正式な名前はアジサイ公園ではないのですが、花どきになると青、紫、白のアジサイの花で埋めつくされるので、街の人たちはその公園のことを『アジサイ公園』と呼んでいます。

アジサイの花が咲く頃になると、私はよくその公園を訪れます。
特に雨が降っている時には、雨の雫に濡れたアジサイの花がとてもきれいに輝いているので、私は雨の日に傘を差して歩くのが好きです。

そして今年もアジサイの花が咲く季節がやって来ました。
去年までは一人で歩いていたアジサイ公園を、今年は好きな人と一緒に歩くことができました。
雨がしとしとと降り続ける六月のある日、私は少し大きめの傘を彼と共有しながら、公園を埋めつくしているアジサイの花を眺めて歩きました。

「とてもきれいだね」
雨に濡れて輝きを増したアジサイの花を見ながら、彼はそう呟きました。
彼はこの街の出身ではなかったので、このアジサイ公園のことはあまりよく知らないようでした。
「この街にこんな素敵なところがあったなんて、もっと早く気付けばよかったな」
彼のちょっと意味ありげな一言を、その時の私は特に気にも留めていませんでしたが、しばらくしてその言葉の持つ意味を知ることになりました。

「来年もまた一緒にアジサイの花を見れるかな」
公園を出て、近くのカフェでお茶を飲みながら、私は彼にそう言いました。
そのとき彼は、少し曖昧に返事をしましたが、やがてはっきりとした言葉で私に言いました。
「実は僕は二年前に転勤でこの街にやって来たんだ。来年には遠い西の街に帰らなければいけない。だから、来年は君と一緒にあの公園のアジサイを見ることはできないよ」

彼のその言葉を聞いた私は驚いて困惑してしまい、すぐに次の言葉が出てきませんでした。
しかし、彼はそんな私のことを見て、優しい笑顔で言いました。
「この街のアジサイを見ることはできない。でも、西の街のアジサイなら見ることができるよ。だから、君と一緒に西の街のアジサイを見てみたいな」

数日後、私はアジサイの花で押し花を作りました。それをこの街のアジサイの花の思い出にするために。
『一緒に西の街に行こう』という彼の言葉に、私は最初とても迷いましたが、彼と会えない寂しさよりも、彼を愛することの喜びを大切にしようと思いました。
そしてもう一つ、アジサイ公園のアジサイの花を愛してこれたことを心の中に抱いて、彼と一緒に西の街に行くつもりです。

時が移り変わっても、アジサイ公園のアジサイの花は、いつまでも輝きを失わないことでしょう。
そして、そんなアジサイの花たちよ……ありがとう。

      

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