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星の降る家
ウォーターフロントにほど近い、シーガルタウンのプロムナード……。
まるでアーチのような並木とレンガ貼の路面が有名だった。
その並木の枝には電飾が施されていて、黄昏時になると明かりが灯り、とても素敵な雰囲気に包まれる。
そしてそこは、恋人たちにとってとてもロマンチックな場所となっていた。
「ねえ知ってた? 雑誌で見たんだけど、夜にこの並木道を恋人同士が手をつないで歩くと、二人は幸せになれるんだって」
食事帰りにシーガルタウンのプロムナードを歩いている時、彼女が僕に言った。
「ふーん、そうなの。でもこんなふうに並木に明かりが灯ってると、夜なのにとても明るいね」
僕は彼女にそう言いながら、明かりが灯って夜の街にポッカリと浮かび上がっている並木を見つめていた。
その時、突然僕の心の中に幼い日の記憶が甦ってきた。
幼少の頃、僕は空も空気も山も川も……周りすべてがとてもきれいなところに住んでいた。
いま住んでいる大都会とは違う、純粋で素朴な小さな町だった。
その町の暮らしは、特に夜が素晴らしかった。月夜の晩は星がとてもきれいで、夜なのに信じられないくらいに明るかった。
夏の夜には、僕はよく縁側に座って夜空を眺めていた。
そんな僕の目の前に、いくつかの小さな光が空からふわふわと降りてきた。
「あっ、見て。光が飛んでるよ、星が降ってきたの?」
「違うわよ。それはホタルっていう生物なのよ」
幼い僕には初めて見るホタルが、まるで夜空の星が降ってきたように見えたが、そばにいた母親が優しく教えてくれた。
僕の住んでいた町では、たくさんのホタルが飛び交って、夏の夜を彩っていた。
母親に教えられてからも、僕はしばらく、それが本当は夜空の星が舞い降りて飛んでいるものだと信じていた。
僕はそんな『星の降る町』がとても好きだった。
しかし、今ではその町でも、ホタルの姿をほとんど見かけることがなくなったと聞いている。
「なんか木の枝にたくさんのホタルがとまっているみたいね」
まるで僕の心の中を見透かしたかのように、彼女が言った。
「えっ、どこにホタルがいるって?」
僕は彼女の言葉に対して、思わずそんなふうに答えてしまった。
「何言ってるの。こんなところにホタルなんかいるわけないじゃない。あなたって、何でもすぐに信じちゃうんだから」
「あっ、そうか。そうだよね、いるわけないよな」
そう言って、二人は顔を見合わせて微笑んだ。
その時、僕は思っていた。彼女に僕の故郷の町の話をしてやろうと。
大都会で生まれ育った彼女、そんな彼女は自然のホタルを見たことがないだろうから。
そして僕たち二人は、歩きながら、いつの間にか自然に手をつなぎあっていた。
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