初恋


「ねえ理恵子、今度の合コン、人数一人足りないんだ。だから来てくれない? お願いね」

友人の真奈美からの電話は、また例によって合コンの誘いだった。
真奈美はよく合コンをしているようだったが、人数が足りなくなると、私はいつも誘われていた。
私も頼まれると断れない性格なので、いつも真奈美に付き合わされていた。

真奈美の話によると、今回の合コンは外資系企業のエリートらしかったが、私はそれについては特に興味は湧かなかった。
真奈美は私に合コンの日時と場所を告げると、いつものように唐突に電話を切ってしまった。

合コンの当日、私は教えられた場所に行くと、もうすでにみんな揃っていた。
どうやら今回は四対四の合コンのようだった。

しばらく話しているうちに、私はその中の一人の男性のことが気になってきた。
その人の名前は『佐藤次郎』……私はその名前に聞き覚えがあった。
それは、小学校一年生の時に同じクラスにいた男の子で、私の初恋の人だった。
彼は二年生になると転校してしまったので、私と彼はそれ以来会ったことはなかった。
しかし、よくありそうな名前なので同姓同名の別人かもしれないし、私の方からその話はしなかった。

合コンが終わってから、私が真奈美にそのことを話すと、彼女は、
「へぇー、そうだったの。だったら聞いてみればよかったじゃない。ひょっとしたら二人は運命の赤い糸に結ばれていて、劇的な再会をはたした……ってことになってたかもよ」
と言って笑っていた。
しかし数日後、私はその佐藤次郎からデートの誘いを受けた。

彼と会った私は、カフェでお茶を飲みながらいろいろな話をしたが、結局小学校のときの話はしなかった。
もちろん彼の方からもそんな話は出てこなかった。
(やっぱり同姓同名の別人だったんだわ)
私は心の中でそんなふうに思っていた。

カフェを出てから彼は、「少しドライブしよう」と言って私を助手席に乗せて車を走らせた。
車の中でも彼は私にいろいろな話をしてくれたが、行き先については何も言わなかった。
しかし、しばらく走っていくうちに、私は見覚えのある懐かしい風景を目にすることになった。

それは私が通っていた小学校だった。
そう……彼はやはり私の初恋の人、『佐藤次郎』だったのだ。
彼は休日の誰もいない小学校の前に車を止めて、私を誘って校庭へと歩いていった。

「小学生の時、君のことを一度泣かせてしまったことがあったよね、憶えてる?」
昔とはすっかり様子も変わってしまった校庭を見渡しながら、彼は私に言った。
「ええ、憶えてます。でもよくそんなことまで憶えてますね。たった一年しかこの小学校にいなかったのに……」
彼は私のその言葉を聞きながら、春の温かい日差しに照らされた校庭を見つめていたが、しばらくして少し照れたような表情で私に向かって言った。
「君のことは何でもよく憶えているよ。だって、君は僕にとって初恋の人だったんだから」

      

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