信じるものは報われる


新しい春が来た。
そして僕らの職場に新しい顔がやって来た。
中山奈緒子……この春、高校を卒業したばかりの女の子だった。
彼女は新入社員らしく、いつも元気いっぱい、すぐに僕らの職場に溶け込んでいった。

そんな彼女の教育係は入社三年目の谷村明美だった。
明美は自分の後輩が入社してきたことにとても喜んで、仕事のことなど積極的に奈緒子の面倒を見てくれていた。
いつもニコニコとしてとても明るい明美、それに新人の奈緒子が加わって、僕らの職場は以前にも増して明るく楽しい職場となった。

しかし、奈緒子は元気があるのはいいが、仕事などでミスが非常に多かった。
まだ入社したばかりで、仕事にも慣れていないせいでもあるが、それにしても多かった。

そんな奈緒子のミスを、教育係である明美はすべて直してやっていた。
もちろん、明美にも自分の仕事があるので、奈緒子のミスを直すために残業することも度々あった。
当の奈緒子はというと、そんなことにはお構いなしで、仕事が終わるとすぐに退社してしまう。

「今日も中山さんのミスを直すために残業するの? それは彼女に自分でやらせたほうがいいんじゃないか」
ある時、僕は明美にそう言ったことがあるが、それに対して彼女は、
「いいんです。中山さんがミスするのは、私の指導が悪い、って事なんですから」
そう言って、いつもの笑顔で答えてくれた。

しかし僕は、それに対して明美に言った。
「だけど彼女も間違って仕事を覚えてしまってるかもしれないし、ミスを指摘してやることも大切だと思うよ」
するとそれに対して彼女は、優しい表情で僕に言った。
「わかってます。でも彼女は早く仕事を覚えようと一生懸命なんです。だから彼女のことを信じて、もう少し長い目で見てあげたいんです」

さらに明美は付け加えて言った。
「それに先輩だって、私が入社したばかりの頃、私のミスを黙って直してくれてたじゃないですか。私、知ってたんですよ。だから私、先輩に迷惑かけないように、一生懸命仕事覚えたんです」
彼女のその言葉に対して、僕はただ微笑みを返しただけだった。

そしてある日の朝……奈緒子は出社するなり明美のところにやって来て、
「谷村先輩、いつも私のミスを直していただいてありがとうございます。私、早くちゃんと仕事ができるように頑張りますから、これからもよろしくお願いします!」
と言ってペコリと頭を下げ、日頃のお礼だと言って手作りのクッキーを差し出した。
明美は頷いてそれを受け取り、そして僕の方を見て優しい笑顔で微笑んでいた。

      

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