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思い出に再会
久しぶりに郊外の図書館を訪れてみた。
緑の芝生と木立に囲まれた建物で、昔からずっと変わらない、落ち着いたたたずまいが感じられた。
学生の頃はこの図書館を利用して、受験勉強なんかをよくしたものだった。
僕がこの図書館で受験勉強をしているとき、クラスメートの慶子もよくやって来て一緒に勉強をしていた。
僕は彼女より成績が良かったので、彼女がわからないところとかを教えてやっていた。
「私、K大学を受験したいんだけど、あそこってレベル高いのよね。いまの私の成績だと難しいから頑張らなきゃ」
そう言って僕の隣に座って、いつも難しい参考書とにらめっこしていた。
でも、そんな彼女の姿を見ると、僕も刺激されてずいぶん勉強もはかどった。
僕も彼女と同じくK大学を受験するつもりだったが、彼女の言う通り、K大学はレベルが高くて、僕の成績でもちょっと難しいようだった。
それを聞いた彼女は、
「でも中村君は私より成績がいいから大丈夫よ。私も一緒に合格できるといいな」
と言って微笑んでいた。
しかし現実は厳しくて、慶子は見事に合格、一方の僕は不合格だった。
そして、僕は他に受験して合格していたT大学に進んだ。
あれから数年、今こうして図書館の机に座っていると、学生時代のあの日の記憶が甦ってくる。
気がつくと、僕の座っている机の前の席で、高校生の男の子と女の子が隣り合わせで座って、一緒に勉強している姿が見えた。
(まるであの日の僕と慶子みたいだな)
そんなふうに心の中で呟いた僕は、自然に微笑みを浮かべていた。
閉館時間が近づいてきて、僕は三冊の本を借りようと受付カウンターへ行った。
ふとカウンターに置かれているチラシを見た僕の目に、その慶子の笑顔が飛び込んできた。
『地元出身作家 ○○文藝新人賞受賞!』
「この方はこの街の出身の作家さんで、新人賞を受賞して本を出されたんですよ」
と図書館の職員の方が僕に教えてくれた。
名前は違っているが、そのチラシの写真の中の笑顔は、紛れもなくあの慶子のものだった。
思い出の図書館で、僕は数年ぶりに慶子の笑顔と再会した。
図書館を出るとすでに黄昏時で、雲は紅く染まっていた。
「こんにちは。先生も図書館に来てたんですか?」
突然声をかけられて振り向くと、それは僕が今担任をしている高校の女子生徒だった。
彼女としばらく話をして別れた後、僕は澄んだ空を見上げながら、
(帰りに本屋によって、慶子の本を買って読んでみるか)
そんなふうに心の中で呟いて、また自然に微笑みを浮かべていた。
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