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バラと彼女と彼と……
私が住んでいる街の近くにはバラ園があります。
郊外の高台に位置していて、色とりどりのバラの花が咲き揃い、訪れる人々を魅了します。
オールドローズから珍しい緑色のバラ、そしてバラのアーチ……私はこのバラ園が好きです。
ここに来て数多く咲き誇っているバラの花を眺めていると、なにか疲れた心が癒されていくような気がします。
その日、私は幼なじみで親友の麻里子と一緒にバラ園を訪れました。
しかし、彼女は今とてもブルーな気分だったのです。
なぜかというと、彼女はもうすぐ結婚することになっているんですが、結婚式の日が近づくにつれて、しだいに結婚することに対して不安を感じてきていたからです。
いわゆる、マリッジブルーというやつです。
恋人として付き合っていたときは、彼のことがすべてよく思えてとても楽しかったのに、いざ結婚が決まってしまうと、彼のことがすごく頼りなく思えてしまう……。
同時に、彼の両親とのことなど、本当にこの人でいいのか、ということが彼女の頭の中で、日に日に大きくなっていったのでした。
数日前、彼女のそんな胸の内を伝えられた私は、ちょっと困ってしまいました。
私自身、まだ結婚の経験はなかったので、彼女の気持ちを本当に理解してあげることが出来るのか、とても不安でした。
でも、苦しんでいる彼女の心をなんとか和ませてあげたい、そう思って、私は彼女をこのバラ園に誘いました。
園内の数多くのバラの花を見ている時の彼女の表情は、とても生き生きとしたものでした。
彼女にとっては、現実から離れて、なにか夢の世界にでもいるような感覚に包まれている……私はそんな印象を受けていました。
私たち二人は、園内を一通り散策してから、その中にあるカフェで一休みすることにしました。
大好きなケーキとミルクティーを味わいながら、私たちはとりとめもない会話を楽しんでいましたが、その話が一段落したところで、不意に彼女の表情が不安に包まれていきました。
「私、なんか結婚するのが嫌になっちゃった……」と彼女は小さな声で言いました。
私は、そんな彼女を前にして、
「ねぇ麻里子、私よくわからないけど、彼もきっと麻里子と同じような気持ちでいるんじゃないかな。だから、二人で正直な気持ちを話しあってみればいいんじゃない、彼のことを信じてね」
と、そんなふうに言いました。
彼女はしばらく黙っていましたが、やがて窓から見えるバラの花を眺めながら、
「そういえば彼、初めてのデートの時に私にバラの花を一本くれたわ。それから誕生日にはバラの花束をくれた。私、それがすごく嬉しかった」
と私に話してくれました。
その夜、私はおよそ五百キロ離れたところに住んでいる、遠距離恋愛中の彼に、一通の手紙を書きました。
『拝啓、お元気ですか。この間のあなたからのプロポーズ、お受けします』
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