サマーキャンドル


光りあふれる晴天が広がるある夏の週末、一台の車が林道を走り抜けて山の中の湖に向かっていた。
日常という世界からかけ離れた、アウトドアライフを満喫するために。

彼女がアウトドアを好きになったのは彼の影響だった。
それまではアウトドアにはほとんど興味はなく、どちらかというと好きではなかった。

「自然の中を歩いてみるだけでもいいし、美しい景色を見ながら美味しいものを食べるのもいい。アウトドアって言っても、なにもそんな大げさなことを考えなくてもいいんだよ」
彼のそんな言葉に誘われて、初めて体験したアウトドアの世界に、彼女はすっかりはまってしまった。
それ以来、彼女は彼と一緒に何度かアウトドアライフを経験してきた。
そして今回行く山の中の湖は、初めて彼女の方から提案したアウトドアスポットだった。

やがて車が目的の湖に近づくにつれて、二人の乗った車は、なにか自然が発する癒しのエネルギーに包まれていくかのような感覚で満たされた。
湖面を見渡すベストポジションに車を止めて、二人は自然の中に一歩足を踏み出した。
山の中の湖は、ピーンと張りつめた緊張感に支配され、凛とした美しさをたたえていた。

そして日が西に傾いて、湖に黄昏の夕焼けが迫ってきた頃、湖畔にテーブルが置かれ、二人の野外レストランの準備が整った。
夕焼けという大自然が作り出す最高の演出の中で、二人はなにかすべての時間が止まって、自然と一体となっていくという、そんな幸せな気持ちを感じていた。

テーブルに料理が並べられると、二人はゆったりと和やかな会話を重ねながら、なんだか魔法のように楽しく流れていく時間を満喫しながら、身も心も贅沢な時間に満たされていった。
そんな中で、夕焼けに染められた湖面は、相変わらず張りつめた緊張感に支配されていたが、昼間とはまた違った美しさを見せていた。

「素敵な空間ね。私、あなたがいなかったらこんな素敵な体験ができてないのよね。アウトドアの魅力を教えてくれたこと、改めてお礼を言いたいわ」
彼女は夕闇が迫ってきた湖面を見つめながら、優しく微笑みながらそう言った。

「今日のこの場所は君が決めてくれたんだから、僕の方もお礼を言わないといけないな」
彼も彼女と同じように、湖面を見つめながらそう言った。そして続けて、
「これからもずっと、君と一緒にこんな素敵な空間を楽しみたい」
と彼女の瞳を見つめて、しっかりとした言葉でそう言った。

(これって、もしかしてプロポーズ?)
彼の言葉を聞いた彼女はそんなふうに心の中で思ったが、そのことは口には出さず、やがて優しい笑顔でゆっくりと頷いた。
それから彼女は、テーブルに置かれたキャンドルに火を灯した。
そのキャンドルの炎は、夕闇の中の二人を大自然が祝福してくれているかのように、温かく優しい光をたたえていた。

 

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