始まりは雨の日曜日


それはある雨の日曜日から始まった……。

その日、中井美奈子はとても不機嫌だった。
なぜならば、せっかくの日曜日なのに上司から休日出勤を命じられたからだ。
それに加えてちょうどその日は雨、美奈子にとっては最悪の日曜日となってしまった。

「あーぁ、どうして私だけが休日出勤しなきゃいけないの。あの課長、何かあるとすぐ私に頼むんだから。それに今日雨降ってるし……嫌だなー」
そんなふうに愚痴をこぼしながらも、美奈子は会社に向かった。

会社に着いてエレベーターに乗ろうとしたとき、美奈子は同期の小林康雄に出会った。
「あれ、小林さんも今日は休日出勤なんですか?」
美奈子は尋ねたが、小林はそれに対して笑顔で答えてくれた。
「まあそんなとこだね。でも僕はよく休日にも仕事に出てるよ。要領悪いからかな、なかなか仕事が片付かなくてね」

美奈子と小林は同期入社だったが、同じ部署ではなかったし顔を合わせる機会もほとんどなかった。
たまに同期の集まりで顔を合わせたときでも、あまり話をしたことはなかった。
小林はどちらかというと同期の中でもあまり目立たない存在だった。

仕事を終えた美奈子は、帰り際に何となく小林の所属している企画部を覗いてみた。
小林の忙しそうに仕事をしている姿を見た美奈子は、特に声をかけることもなく、そのまま会社を後にした。

次の日曜日、美奈子は忘れ物を取りに会社に立ち寄ったが、企画部を覗いて見ると、そこにはまた小林の姿があった。
(小林さん、今日も仕事してるわ。そんなに仕事が忙しいのかな……それとも仕事が好きなの?)
美奈子は仕事をしている小林の姿を見ながら、そう心の中でつぶやいていた。

美奈子が小林のことを同期の女友達に話したら、彼女は、
「小林さんって、企画部の中で結構重要な仕事を任されてて、それですごく忙しいみたいよ。毎日夜も遅いし、休みの日もほとんど会社に出てるんだって。前に企画部の友達に聞いたことがあるわ」
と教えてくれた。

そして、とある日曜日……。
相変わらず会社で仕事をしている小林がそろそろ帰ろうかと時計を見たとき、ちょうど美奈子がやってきた。

「お疲れさまです、今日は私もまた休日出勤です。小林さん、たまには息抜きしないと仕事もはかどりませんよ。いいお店があるんで、一緒にご飯食べに行きましょう!」
と美奈子が言うと、それを聞いた小林も笑顔で応えた。
「ありがとう、じゃあ今日の仕事はこれで終わりだ」

雨の日曜日から始まったストーリー……それはゆったりと、しかし確実に二人の距離を縮めつつあった。

 

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