年の初めの……


新年を迎えると、僕はいつも決まって近くの神社に初詣に行く。
その神社は決して大きな神社ではなかったが、お正月には初詣客で結構賑わっている。
少し離れた西の町には、もっと有名で大きな神社があったが、僕はいつもその近くの神社に行っていた。

去年の正月、僕は彼女と一緒にその神社に初詣に行った。
そして今年もそのはずだったが、しかし今、僕は一人で初詣に来ている。
年末に彼女と大げんか、それが一人で来ている理由だった。
けんかの原因は、ほんの些細なことだった……。

「ねぇ、初詣には着物を着て行こうかどうか迷ってるんだけど、どっちがいいと思う?」
「そうだなぁ……別にどっちでもいいんじゃない」
僕の気のない返事に彼女はちょっとムッとした様子で、
「ねぇ、ちょっとは真剣に考えてよ、あなたと一緒に行こうと思ってるんだから」
と言った。しかし僕はそれに対して、
「君の好きなようにすればいいんじゃない、どうせ着物を着るのは君自身なんだから」
と面倒くさそうに言ってしまった。

しまったと思ったが、もう遅かった。彼女は完全に怒ってしまった。
「わかったわ、もういいわよ。初詣にはお友達と一緒に行くわ。あなたも自分の好きなようにすればいいのよ。私の振り袖姿、見れなくて残念ね」
彼女のその言葉を聞いた僕は、謝るより先に腹を立ててしまった。
「それぐらいのことで怒ることないだろ。それに振り袖姿なんてどうでもいいよ」

その後、僕は彼女に謝ったが、彼女はあいかわらず怒ったままで、結局僕は一人で初詣に来るはめになってしまった。
神社の石段を登りながら、僕は去年彼女と一緒に来たときのことを思い出していた。

「ねぇ、ここの石段が五十七段あるってこと知ってた? 私ね、小さい頃ここにお参りに来て、いつも石段の数を数えてたのよ。だから今でもよく覚えてるわ」
そう言って、僕に楽しそうに教えてくれた。

お参りを終えると、僕はいつものようにおみくじを引いてみた。
結果は”吉”だったが、そのときまた、僕は彼女のことを思い出した。
「おみくじってね、”吉”が一番多く入ってるんだって。だからかな、私いつも”吉”ばっかり引いてるのよね」
そう言われた僕も、そのとき”吉”を引いてた。

おみくじを折って木の枝に結びつけようとしたそのとき……。
僕の携帯電話からメールの到着を知らせるメロディーが鳴った。それは彼女からだった。
『ゴメンね、初詣やり直しましょう。私、振り袖着て行くから』

年の初めの彼女からのメール……。
どうやら今年もいい年になりそうだ。

 

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