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ミルクティーをもう一杯
海の見える坂の上の街の喫茶店……。
窓から見える海の景色がとても心地よくて、人々の語り合う声が素敵な優しさを作り出していました。
高校生の頃、私はその喫茶店でアルバイトしていました。
働きだして間もなく、私はときどきやってくるひとりの女性客が気になるようになりました。
その女性は、いつもミルクティーを注文し、いつもノートに何かを書いていました。
(あの人はいつも何を書いているんだろう、詩とか小説か何かかな。作家なんだろうか)
私はいつもその女性が来るたびに気になって、好奇心でいっぱいでした。
それと同時に、私はそんな彼女の姿を見て、すごく憧れていました。
あるとき、私は思いきってその女性に尋ねてみました。
「何を書いているんですか? ひょっとして作家さんですか?」
その時彼女は、優しそうな笑顔を浮かべて、私に答えてくれました。
「作家なんて、そんな立派なものじゃないわ。でもいつか教えてあげられるときがくるかもしれないわね。それより、ミルクティーをもう一杯いただきたいわ」
それから数週間後、その女性はひとりの男性と一緒に喫茶店を訪れるようになりました。
その男性はとても素敵な人で、彼女の恋人のようでした。
ふたりの会話はいつも、楽しく優しい雰囲気で満たされていました。
もちろん、そのとき彼女はペンとノートは持っていませんでした。
でも彼女は、ときにはひとりで喫茶店にやって来て、その時は必ずノートに何かを書いていました。
その後、私は高校を卒業してその街から離れてしまったので、その喫茶店で働くことはもちろん、行くこともなくなりました。
結局その女性が何を書いていたのか、私は知ることができませんでした。
数年後、私はその街に帰ってきました。
そしてあの喫茶店にひとりの客として訪れることになりました。
もちろん、あの女性の姿はもうありませんでした。
でも、その喫茶店には昔と変わらず、いつも優しさがあふれていました。
そして私はバッグからペンとノートを取りだしました。
「いつも何を書いているんですか?」
その喫茶店で働いている女の子が私に尋ねてきました。
そのとき私は彼女に向かって、こんなふうに答えてあげました。
「そうね、いつか教えてあげられるときがくるかもしれないわね。それより、ミルクティーをもう一杯いただけないかしら?」
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