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アイ・ラブ・ドライビング
僕と彼女は、ふたりとも車を運転するのが大好きだ。
だからデートの時はいつも、どっちが運転するかが問題になる。
大体はふたりが交代で運転するが、どちらかというと彼女の運転の方が多い気がする。
「ねぇ、今日は海岸通りのカフェに行きましょうよ。私が運転するから」
「ちょっと待てよ、君はこの間もずっと運転しっぱなしだったじゃないか。今日は僕に運転させてくれよ」
「えー、そうだったっけ。じゃあこうしましょう。行きはあなたが運転して、帰りは私が運転する、これでいいでしょ」
いつもこんな調子で、結局彼女の方が多く運転している。
彼女は休憩なしで何時間でも平気で運転してしまう。
例えば、片道四時間かかるK市に日帰りで行って来たとか、暇だったからほとんど休憩なしで八時間ぐらいドライブしていたとか、そんなことはしょっちゅうだった。 僕はいつも彼女のそんな姿を見て、感心するやら驚くやらだった。
でも、僕もそんなことは平気でやっていたので、彼女の気持ちはすごくよく理解できた。
ある日、久しぶりのデートで彼女は僕に言った。
「今日は海を見に行きましょうよ。運転はあなたがしてね」
僕はそれを聞いて驚いた。いつもなら必ず運転させてくれと言うはずなのに。
「体の調子でも悪いのか?」と僕は尋ねたが、彼女は、
「何でもないわよ、さあ行きましょう」と言った。
海の見えるカフェでコーヒーを飲んだ後、僕たちは砂浜に出ていった。
海から吹いてくる風がとても心地よかった。
その風を感じながら、不意に彼女が僕に向かって話し始めた。
「あなたと付き合って二年、ずいぶんわがまま言って困らせてきたけど、最後にもう一つだけ、私のわがまま聞いて」
彼女のいつになく寂しそうな表情を見た僕は、黙って彼女の次の言葉を待った。
「私ね、しばらくひとりで走ってみたくなったの。もうあなたを助手席に座らせたくないわ」
要するに別れたいということだった。そして最後に彼女は言った。
「帰りもあなたが運転してね、私きょうはずっと助手席に座るから」
それを聞いた僕は、相変わらず寂しそうな表情の彼女を見て言った。
「帰りは君が運転してくれよ。最後にもう一度、君の運転が見てみたいからさ」
そして月日は流れ……。
「今日は天気がいいからドライブに行こう! 僕は運転するのが大好きだからどこへでも連れて行ってあげるよ」
「うれしい! 私運転するの苦手だから、助手席に座ってるのって楽でいいわ」
僕は青い空の下、運転嫌いの彼女を乗せて走りだした。
(あの運転好きの彼女も、きっとこの空の下を自由に走り回っているんだろうな)
ふとそんなことを考えながら、僕は車を走らせていった。
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