パーキングに愛の祝福を


朝、小島美紀はいつものように駐車場に車を止めた。
いつものように紺色のセダンの隣に……。

紺色のセダン……それは同じ会社で美紀が憧れている先輩、人事課の高橋のものだった。
こうやって彼の隣に駐車するようになって一カ月がたったが、二人が言葉を交わす機会もあまりなかった。
美紀にとってはそれが残念であり、またとてももどかしかった。

美紀が車を降りて会社に向かおうとしたとき、一人の女性が車から降りてくるのが目に入った。
(あれは同期の河田さんだわ、彼女もこの駐車場に車を止めてるんだ)
美紀は心の中でつぶやいて、そして彼女の方に向かって歩いて行き、声をかけた。
「おはよう! 河田さんもこの駐車場に車を止めてたなんて、なんか偶然ね」

河田友美……彼女と美紀は同期入社だったが、そんなに親しいわけではなく、普段はほとんど付き合いもなかった。
どうやら彼女が美紀と同じ駐車場を利用するようになったのは一週間ほど前からのようだった。
しかし、それから二人は時々顔を合わせることになり、親しく接するようになった。

数週間後、美紀たちの同期会が行われ、久しぶりにみんなが顔を合わせたが、そこに河田友美の姿はなかった。
同期会も盛り上がり、突然誰かが欠席している河田友美のことを話し出した。
「そういえば同期の河田さん、人事課の高橋さんと付き合ってるらしいよ」
「ああ、それなら俺も知ってるよ。この間公園通りのフランス料理店でふたりで食事してたよ」
「へー、そうなんだ。彼女おとなしくてあんまり目立たないけど、結構やるもんね」
「なーんだ、僕は密かに彼女のこと好きだったのに……あの高橋さんとじゃあ勝負にならないや」

そのとき美紀は、そんな同期の友人達の好き勝手な会話を黙って聞いていた。

次の朝、美紀はいつものように駐車場に入ってきた。
紺色のセダンの隣はいつものように、美紀の車のためにぽっかりと空いていた。
しかし、美紀はそこを通り過ぎて別の場所に車を止め、車を降りて歩き出した。

ちょうどそのとき、河田友美の車が駐車場に入ってきた。
それを見た美紀は、あの紺色のセダンの隣を指さして彼女の車を誘導した。
河田友美が車から降りてくるのを待っていた美紀は、「おはよう!」と元気よく声をかけ、一緒に歩き出した。

その後、河田友美の車が毎日、紺色のセダンの隣に止められるようになったのは言うまでもない。

 

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